人類学者である小西公大さんによる「ヘタレ人類学者、沙漠をゆく 僕はゆらいで、少しだけ自由になった。」を読んだ。
とにかく好きな言葉がたくさん出てくる本だ。冒頭からすごい「なぁ、コーダイ。世界は全部、風によってできていると思わないか?」なんだかわからないけどすごい!(そしてなんとなく分かってくる。)
フィールドワークを通して人類の隠された文化の秘密を解き明かすスマートな人類学者!そんなイメージを覆す、フィールドワーク中の失敗やヘタレ具合を隠さずに綴った軽快な”物語”だ。大学の恩師からうけた「世界の異質さを存分に味わって、もみくちゃにされて自分を壊してきなさい」という説教をきっかけにインドへ旅立つところから物語がはじまる。「自分探し」じゃなくて「自分壊し」の旅なのがとてもいい。
90年代のインド、ビビりすぎてホテルに引きこもってしまう小西さんに笑ってしまうし、それを全部書いてくれるのがとてもいい。さまざまな出会いから沙漠の村へとたどりつく。最初は歓迎されるも1週間も経つとみんな慣れて普通にめちゃくちゃ怒られたりするし、私物は共有財産みたいになっちゃうし、誰も「ありがとう」 とか言わない。羊を殺すための儀式や、コブラの毒を治療してまう呪医、真夜中の狩猟(著者だけが暗すぎて何も見えない)、想像もできない世界のエピソードが立て続くものだからページをめくる手が止まらない。そして、それらの出来事に対して先行研究などをふまえた解釈を添えてくれるのも人類学の本としても有り難い。
この本で重要なキーワードになるのが「怒り」だ。怒られること怒ること、インド社会での怒りの表出の仕方から個々人の違いを乗り越える視点を導き出しが素晴らしくて感動した。