「けもの道の歩き方」著:千松信也

辰野町のもう使われなくなった図書館にできた新しい「本屋 山山」さんで買った「けもの道の歩き方」(著:千松信也、リトルモア、2015)を読んだ。

京都でわな猟をやっている著者が、猟師の視点から日本の自然を語るエッセイ集。シカやイノシシといったお馴染みの動物ごとに、その動物の生態、狩猟について、経験談が書かれている。長野には住んでいて、近くに狩猟をやっている人はいるけれども、全く知らない世界を覗き込める。

猟師としての自分が、狩る対象と同じく動物なのだと感じる場面がすごくよくて、狩猟期間がはじまってしばらくして慣れてくると、森の雰囲気で獲物が捕れているかどうかが分かるようになってくるという

「極端な話に聞こえるかもしれないが、小枝が一本ずれていたり、葉っぱが一枚裏返っているだけでも獲物の動きが伝わってくる。」(同書、60ページより引用)

以前 、読んだ「ヘタレ人類学者 沙漠へいく」(著:小西公大、大和書房)には、インドの沙漠の民が月明かりの下で狩りをして日本からきた著者が何も見えずに困惑する描写があった。テクノロジーによって得られる恩恵とともに、人間が失った能力について考えずにはいられない。

シカやイノシシ以外にも、里山で暮らす動物についての狩猟体験や歴史が書いてあるのもとてもよかった。タヌキ、アナグマ、アライグマ(日本にも生息してる!)それに鳥たち。ドバドが飛鳥時代にヨーロッパあたりから日本にきた鳥だなんてしらなかった。そんな動物や森、狩猟に関する事実、歴史が、細かい出典元とともに載っているのも魅力的だ。読みたい本が増え続けちゃう。

なにより著者の千松さんが、動物の命を奪うことについてぐるぐると考え続けていて、そのぐるぐるとした考えがそのまま綴られているのがとてもよい。そして、福島での原発事故後の放射能が野生動物にどういう影響を与えるかを書いた章は大変読み応えがあった。

コロナのとき人間たちがいなくなった中目黒の町でタヌキやハクビシンをみかけて嬉しかったのを思い出す。野生化したインコの群れたち、目黒川では誰かが捨てた亀たちが甲羅干しをしていて。大都会にもそういう生態系があって、ずっと眺めていた。

今、私は長野で毎日散歩をしている(ダイエット!)別に山奥にいくわけじゃないけど、カモシカをみたことがある(微動だにしないので誰かが森に放置した現代アートかと思った)、シカ、キツネ、タヌキはほとんど夜にしかみない。子連れの猿の群れ、キツツキ、まるで道案内をするかのように飛ぶセキレイ、昨日はキセキレイをみかけた。鮮やかな黄色が森に映える。まだ植物のことは詳しくない。知りたいことが身近にあって、それが増えていくのがとてもうれしい。

「ヘタレ人類学者、沙漠をゆく」

人類学者である小西公大さんによる「ヘタレ人類学者、沙漠をゆく 僕はゆらいで、少しだけ自由になった。」を読んだ。

とにかく好きな言葉がたくさん出てくる本だ。冒頭からすごい「なぁ、コーダイ。世界は全部、風によってできていると思わないか?」なんだかわからないけどすごい!(そしてなんとなく分かってくる。)

フィールドワークを通して人類の隠された文化の秘密を解き明かすスマートな人類学者!そんなイメージを覆す、フィールドワーク中の失敗やヘタレ具合を隠さずに綴った軽快な”物語”だ。大学の恩師からうけた「世界の異質さを存分に味わって、もみくちゃにされて自分を壊してきなさい」という説教をきっかけにインドへ旅立つところから物語がはじまる。「自分探し」じゃなくて「自分壊し」の旅なのがとてもいい。

90年代のインド、ビビりすぎてホテルに引きこもってしまう小西さんに笑ってしまうし、それを全部書いてくれるのがとてもいい。さまざまな出会いから沙漠の村へとたどりつく。最初は歓迎されるも1週間も経つとみんな慣れて普通にめちゃくちゃ怒られたりするし、私物は共有財産みたいになっちゃうし、誰も「ありがとう」 とか言わない。羊を殺すための儀式や、コブラの毒を治療してまう呪医、真夜中の狩猟(著者だけが暗すぎて何も見えない)、想像もできない世界のエピソードが立て続くものだからページをめくる手が止まらない。そして、それらの出来事に対して先行研究などをふまえた解釈を添えてくれるのも人類学の本としても有り難い。

この本で重要なキーワードになるのが「怒り」だ。怒られること怒ること、インド社会での怒りの表出の仕方から個々人の違いを乗り越える視点を導き出しが素晴らしくて感動した。

 

『県警対組織暴力』

作業をしていたら、Youtubeで『県警対組織暴力』(1975年/監督:深作欣二/脚本:笠原和夫)が公式チャンネルから無料ライブ配信されていて、途中からだったけど、つい観てしまう。

ろくでもない警察とろくでもないヤクザのブロマンス映画である。改めて観ると、演出も構図も素晴らしい。
癒着していた警察とヤクザの仲が壊れていくシーンなんか、啖呵によるパワーバランスの変化が美しい構図で動的に演出される(しかも長回し!)、テレビから流れる「こんにちわ赤ちゃん」をBGMに血みどろでのたうち回る暴力シーンなんかものすごい。菅原文太と松方弘樹の顔の演技が暑苦しくていい。

友達がおすすめしていた小説『すべての見えない光』(アンソニー・ドーア)が届く。厚切りパンみたいな文庫本で最後まで読めるか心配。読み終わったらNETFLIX版のドラマを観よう。

読みたい本が多すぎる

読みたい本を読んでていたはずなのに、いつのまにか興味が移って別の本を読んでいる。そんなこんなで積読がたまってしまっている。

昨日の夜は「先住民から見た世界」「ヘタレ人類学者、砂漠をゆく」スパニッシュホラーの短編を1章づつ読んで眠りについた。全部が混ざった変な夢をみた。

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